税務会計記述対策シート

Session1

問題:租税回避の否認規定についての意見を述べなさい。

解答: 日本には、海外のGAARのような、すべての分野を包括する一般的否認規定はなく、同族会社の行為または計算で、これを容認した場合に法人税・所得税等の負担を不当に減少させる結果となると認められるときにこれを否認して更正または決定を行うことができるといったような、個別の分野に関する一般的否認規定のみが存在する。私は日本のこのスタイルについて賛同する。その理由として、課税権力の濫用の危険性が高いという点があげられる。一般的否認規定は、その適用範囲が広く、恣意的な運用が行われる可能性があるため、納税者の予測可能性や法的安定性が損なわれると考える。

Session2

問題: 納税者はなぜ不動産の流動化を行ったのか。目的を記述せよ。

解答: まずは資金調達があげられる。不動産を流動化することで、即時に多額の資金を調達することができる。これにより、事業拡大や新規投資、運転資金の確保などが可能になる。 次に経営の効率化があげられる。不動産を保有し続けることには維持管理コストや固定資産税が伴う。不動産を流動化することで、これらのコストを削減し、経営資源をより効率的に配分することができる。最後に財務構造の改善をするという目的もある。不動産を売却し、得られた資金で負債を返済することで、財務構造の健全化を図ることができる。特に、資産の流動性を高めることで、企業の財務安定性を向上させることが可能である。

Session3

問題: クラヴィス事件について、破産会社に企業会計原則が前提とする継続企業の公準を適用することについて、法人税法22条4項に照らしあなたの意見を述べなさい。

解答: 妥当である。企業会計原則は、期間損益計算をすべきことを前提とし、例外的な場合を除いて過年度遡及処理を予定していない。また、法人税法22条4項でも、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するものとしているから、本件のような場合にも、前期損益修正によることが公正処理基準に合致するというべきである。

Session4

問題: デンソー事件について、タックスヘイブン対策税制の趣旨を述べなさい。

解答: 平成22年度税制改正におけるタックスヘイブン税制の統括会社特例が創設された背景は、リーマンショック後の経済回復を図るための一環として行われた。当時、企業のグローバル展開が進む中で、海外子会社を通じた租税回避が問題視されていた。この改正では、グローバルな企業活動を促進しつつ、租税回避を防止するために統括会社特例が導入された。特例は、一定の条件を満たす地域統括会社に対してタックスヘイブン税制の適用を除外するものであり、実質的な経済活動を行っている場合には、その所得を国内で課税対象としない措置が講じられた。この特例の導入は、海外に拠点を持つ日本企業が現地での経済活動を積極的に展開できるようにし、租税公平性の確保を目的としている。

Session5

問題: 日本美装事件について、経理部長が損金計上した架空外注費にかかる損害賠償請求権の計上時期について、根拠とともに答えなさい。

解答: 日本美装事件では、経理部長が架空外注費を損金計上したことに対する損害賠償請求権の計上時期が問題となった。裁判所は、損害賠償請求権は不法行為が発生した時点で客観的に権利が発生するとしつつも、その請求権が具体的に行使可能となった時点で計上すべきであるとした。具体的には、損害が確定し、損害賠償請求が法的に認められる時点で益金計上されるべきとされた 。これは、企業の財務報告の正確性と信頼性を確保するためのものであり、適切な時期に計上することが求められるからである。

Session6

問題: ヤフー事件について、当該事件の最高裁の規範を、ユニバーサルミュージック事件の高裁の規範と比較して述べなさい。

解答: 両事件に共通するのは、形式的な取引の外観にとらわれず、実質的な経済効果や合理性を重視する点である。ただし、ヤフー事件では最高裁が組織再編に特化して経済実態に基づく課税判断を強調したのに対し、ユニバーサルミュージック事件では高裁が広範な法人税の課税基準に対して経済的実態と合理性の総合評価を行った点に特徴がある。